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~はじめに~

中村天風財団認定名古屋の会では、心身統一法の教えを広く一般の人たちへ伝えていく新たな取り組みを始めることにしました。そのまず第一歩として、『日日是好日』の著者である森下典子さんをお招きして、講演会を開くことにしました。『日日是好日』は、昨年映画化され、黒木華さん、樹木希林さんが出演され大変な好評を博しました。

著者である森下さんは、『日日是好日』の副題として、「お茶が教えてくれた15のしあわせ」をあげられ、著書の中の多くの言葉や情景が、私たちが日々の行修を行っていくにあたっての新たなヒントとなるという思いから今回の講演会の運びとなりました。

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講演会は、6月30日の午後1時半から4時過ぎまで、名古屋駅前のウィンクあいちで行われました。東京、大阪からの参加者も含め、ほぼ満員の75名の方たちにご参加頂きました。

会がはじまる前に、現在ニューヨーク在住の方が制作した今回のリーフレットの紹介があり、青色と雨のデザインが「雨降りなのに青空の澄んだ気持ち」を象徴しているとの説明がありました。


(ニューヨーク在住の方がデザインしたリーフレット)

会の冒頭、今回の会に至る経緯として、お茶の稽古中に体験した「沈黙の数秒、深いやすらぎ」などの記述を、「まるで安定打坐の境地を表わしているようだ」と感じたある会員が、驚きと感動を伝えるために送った1本のメールからはじまったことが紹介されました。

続いて、名古屋の会の長谷川代表より「『日日是好日』を読んでとても感激しました。雨の日は雨を聴く、雪の日は雪を見る、夏には暑さを、冬には身を切る様な寒さを味わう、どんな日も思う存分その日を味わう、は本当に心に残りました。天風会では『晴れてよし、曇りてもよし、富士の山』という言葉があり、似たものを感じました。皆様も今日一日実りある時間を楽しんでください。との挨拶がありました。

(名古屋の会代表 長谷川氏)

今まで森下さんの作品のうちドラマが2本、映画が1本つくられ、森下さん役を、賀来千香子さん、杏さん、黒木華さんという錚々たる女優が演じたというプロフィール紹介後、森下さんにご登壇いただくことになりました。

講演会は名古屋の会の松田副代表の司会のもと、インタビュー形式で進められました。


(左:名古屋の会副代表 松田氏、右:森下典子氏)

最初の質問、中村天風財団(天風会)はご存知でしたか?に対して、中村天風という名前は知っており、精神世界の本のコーナーで見ていました。いろいろな人に影響を与えた人であることは知っていました。とのお答えでした。

引き続き、本を書こうとしたきっかけ、映画製作に至るプロデューサー、監督、樹木希林さんとのエピソードなど、ユーモアを交えてお話いただき、会場の雰囲気は和みました。

そして、いよいよ本題の『日日是好日』の内容の話になりました。

・武田先生の教え 重いものは軽々と、軽いものは重々しく。

・お茶は形、入れ物に心が入る。まずは形、形に沿った実が入る。おじぎ一つ難しい。きれいなおじぎができたとき敬意や感謝が入る。形を作れば自ずとそこに中身が入る。この宇宙は何も存在しないことはあり得ない。書でも間や空間は何もないのではなく何かが存在している。形とはそういうもの。

・学びについて、”私は何も知らない”にいかに早く気付くか。気づいたもの勝ち。

畳を何歩で歩くか、ふすまの開け方、歩き方など、知らないことばかりだった。

・茶筅(ちゃせん)を通して感性が研ぎ澄まされる。おいしいお茶とは、棗(なつめ)から取り出したミクロの粉末が、お湯に出会い、練っているときに滑らかになり甦る瞬間がある。

・松風の音がやんだ瞬間(眠りよりも深い安息の数秒は、無になれと言われて無になれるほど簡単なことではないから大事。お茶が良いのは無にならざるを得ない仕掛けがある。手順が沢山あり茶室のルールを守っていると他のことを考える暇がなくなる。

・雨を聴く。茶室の雨の音は季節によって異なる。すさまじい雨の時、雨の音を聴いていると、向こう側に行ってしまったような気分になった。三昧の境地、今ここにいれば、私はどこにも行ける。私はどこまでも私という気持ちになれる。この気持ちは話し合えないもの、伝えられないもの。この気持ちを分かち合えたらどんなに幸せか。

この気持ちを分かち合うために書いてきたと言っても過言でない。

・お釜の前に座ったら、お釜の前にいなさい。ここにいるから、どこにも行ける。ここにいれば全てが叶う。これをいつか誰かに伝えたいと思っていた。

こうした、お話をとても熱のこもった気持ちでお話しくださいました。

松田副代表からは、カリアッパ師と天風先生との、水にお湯を注ぐことで諭した内容とそっくりなこと、「このままでよい」ことが、「ありのままに 我ある世とし行きゆかば・・」の歌に通じていること、掛け軸の不苦者有知(福は内)、「苦しまざる者は知有り」は、「人生の真の幸福は、あらゆる苦悩を苦悩とせざる心の中に存在する。・・」と同じ意味合いを持つことなど、共通しているというコメントをされていました。

そして、会場の皆さんからの質問に対して、森下さんの思いを、淀みなく答えて頂くことができました。

最後に、今を生きる私たちにとって、「このままでよい」「今を味わう」「どんなことにも感謝と歓喜で生きる」という本物の教えが必要で、多くの人に広がってほしいし、伝えていきたいという司会の言葉で締めくくられました。

その後は、森下さんの本のサイン会。当日は、『日日是好日』、『好日日記』、『猫と一緒にいるだけで』の3種類を販売したのですが、とても好評で、サインに対して長蛇の列ができました。

森下さんは、ひとり一人にとても丁寧にサインをして笑顔で返してくださいました。

サインをもらった会員の一人が、映画に黄色の和服で出演していらっしゃいましたね。と問いかけると、森下さんは微笑みながら頷いていらっしゃいました。

参加者からは、「森下さんと松田さんとの掛け合いもとても小気味良く、森下さんもとてもお話がお上手で、あっと言う間の2時間半でした」「楽しくも深い内容で真理瞑想のような講演会でした。」「大満足」という感想が聞かれました。

森下さんからは、熱心に耳を傾けて、頷いたり、笑ったりされて、いい空気が生まれたのだと思います。」という、うれしい返信メールがありました。

中村天風財団(公益財団法人天風会)認定 名古屋の会 森下典子さんに聞く会実行委員