中村天風財団では、全国の公認の会を7ブロックに分け、各ブロックでイベントなどを企画する「100周年記念プロジェクト」を行っています。
神戸・中国・四国ブロックは奇跡のコラボ
令和元年11月16日(土)神戸の湊川神社神能殿において、神戸・中国・四国ブロックの中村天風財団創立100周年記念特別講演会が開催されました。
テーマは「笑いと人生」。中村天風財団認定・ 村里泰由講師と落語家 三遊亭圓歌師匠とのコラボ企画です。圓歌師匠は今年3月、歌之介改め四代目三遊亭圓歌を襲名されました。私がこの落語家さんを知り得たきっかけが神戸での村里講師の講演だったので、この度の奇跡のコラボとして、当ブロックの100周年記念特別講演会が実現出来た事は、この上ない喜びでした。
11月16日(土)暖かい日差しの晴天に恵まれ、会場は約270名の来場者の熱気で活気づいていました。田中一行実行委員長の挨拶に続き、村里講師の講演が始まりました。
(田中一行実行委員長)
第1部 村里泰由講師の講演
講演タイトルは「人生は有難うを探す旅」です。作務衣姿に譜面台という村里講師独自の講演スタイルで、時には視覚に訴え、ご自身の体験談を踏まえ、大変わかりやすく講義して下さいました。
(村里泰由講師)
村里講師は昨年肺ガン(ステージ3)の告知を受け手術され、抗ガン剤治療を終えて見事に復活!
何かあるのが人生。病の時こそ、不運命の時こそ、より一層心を強く持つのだ。
天風哲学が教える「積極」とは、「負けるもんか!」と頑張る事ではない。事があろうがなかろうが、その事象に心が捉われていない虚心平気の状態を真の積極というのである。されば、どうすれば、そのような心持ちになれるのか?それは「どんなことがあっても全てを感謝に振り替えること」です。
村里講師は、毎日10個のありがとうを見つけて書き出す事を続けておられるそうです。この「ありがとうノート」は既に24冊にも至っているとの事。“ありがとう”を毎日つけ続ける事は、たやすい事ではないはずです。なぜなら“ありがとう”と感じなければ書く事が出来ません。しかし毎日つけ続けるという習慣が“ありがとう”と感じる心を育み、結果今までは見過ごしていたであろう些細な事柄にも感謝する心を培っていく事になるのだと思いました。「全てを感謝に振り替える」という尊い教えの実践により病を克服され、今日の颯爽として元気なお姿そのものが、それを身をもってお示し下さった、とても感動的な講話でした。
村里泰由講師と三遊亭圓歌師匠との対談
講演の後は、村里講師と圓歌師匠の対談です。
(左:村里講師、右:三遊亭圓歌師匠)
【襲名披露の様子、エピソードについて】
今年中に先代の三回忌を済ませて準備をすると襲名披露は来年となります。しかし来年では日本中がオリンピックで盛り上がっていて目立たない!(会場は大爆笑です)だから一門の皆様にも快諾してもらい今年の襲名披露となったとのこと。
【村里講師が圓歌師匠を知ったきっかけは?】
読売新聞の「編集手帳」というコラム欄で出ていた圓歌師匠の落語の話「銭形平次と女房お静はフランス語を話す」です。女房が大切な商売道具を持ったかと訊ねた。「ジュテモタ?(十手持った?)」「マダモタン!(まだ持たん)」
またまた会場は大爆笑でした。
【圓歌師匠が中村天風を知ったきっかけは?】
天風先生と師匠の結びつきは、佐々木将人先生(合気道家で神官。中村天風先生のカバン持ちをされた最後の直弟子と言われた方)でした。将人先生は、とてもユニークな先生だったそうです。若い時に打ち損じた釘が左目を直撃し、左目はほとんど見えなかった。曰く「左目が見えなくなり女房に一目ぼれ。仲人の依頼が殺到し、片目(固め)の盃じゃ!」
場を温めるというのでしょうか?本題の落語に入る前から、すでに会場は笑いに包まれていました。
【圓歌師匠にとっての天風哲学とは?】
師匠は元々寂しがり屋で、人を笑わせる事が昔から好きだったそうです。天風哲学を学ばれて、天風先生が言われる“不孤”(孤ならず。生きているという事は、大宇宙と共に生かされているという事である)に一番感銘を受けられたそうです。
まだまだ続けて聞きたい対談でした。師匠も会場との一体感を感じて下さった証拠でしょうか。舞台袖に引き揚げられた圓歌師匠も「あっという間だったね」と言われていました。
休憩時間をはさみ、いよいよ圓歌師匠による創作落語『中村天風伝』です。
第2部 三遊亭圓歌師匠による落語
師匠は、出逢い・ご縁をとても大切にされています。佐々木将人先生との出逢いから、天風哲学を学ばれました。年間317日飛行機に乗り、忙しく活躍されていた38才の時、肺に水が溜まり、タクシーから降りて3歩めで歩けなくなりました。日本三大庭園の一つ、後楽園、失楽園、肋膜炎だったそうです。(会場大爆笑)。この時将人先生から「病の時は病を治すな。己を治すんじゃ!起きた事は全部、己を治すための有り難い出来事じゃ!」と言われました。その一言で元気になった。「言葉の力はすごい!!」と力説されました。
この病を自分が一番健康だった高校時代のイメージを強烈に思念しながら、プラナヤマ呼吸法(※活力吸収法。大宇宙のエネルギーを体内に取り入れる方法)と薄着の実践により治されました。(2月の山形、マイナス2℃の外気温でも、師匠はランニング1枚にワイシャツで通されたようです。天風先生も皮膚を鍛えるため、冬でも薄着を推奨されています)
明るく生きましょう。積極の言葉を使いましょう。疲れたお父さんが家に帰って来て、愛する妻が、子供が明るい笑顔で出迎えてくれたら疲れも吹っ飛ぶんです。家庭には温かい言葉と冷たいビールが必要です。その逆の冷たい言葉と温かいビールは恐ろしい(笑)
師匠は最後に落語で天風教義の根幹をまとめて下さいました。人はなぜ悩むのか?それは欲があるからだ。邪な欲を抱くから、叶わない欲が心を苦しめる。入場料分だけ笑わせろ!これは邪な欲だそうです(笑)世のため人のために尽くせばよいのです。
天風先生は言われます。「捨欲などという出来ない相談に心を悩ますな。悩む欲は欲ではない。人の喜びを我が喜びとなすことのみを、己の欲望の炎と燃やせばよいのだ」。これは天風教義では「霊性満足の生活」といいます。
天風教義を見事に組み込んだ汗びっしょりの熱演に、会場は終始笑いに満ち大喝采でした。
最後は村里講師、圓歌師匠にも再度舞台に上がって頂き、田中実行委員長の音頭で全員で三本締めを行い、幕を閉じました。