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本書は、中村天風の創設した心身統一法に触れて感銘を受けた人16人が、特に印象深かった言葉を366項目について選んだものである。
毎日一つずつ1年間の日付とともに編集してある。
中村天風財団メールマガジンに登録すると、その日の項目と、その出典を教えてくれるので便利である。
選者が印象に残った言葉なので、私自身にとってもインパクトが強い項目で、この本は私にとって有用なものである。

心に残ったフレーズがタイトルになっているので、私にとっては、意外に思えるような表現のものもある。例を挙げてみると
「人間は水中で生活している(10月8日)」は、水を飲むことに言及されている。ビールをおいしく飲むために運動して汗をかく、というのは「違うな」と私は気づいた。
「疲れたら休め(10月6日)」は、当たり前のことかとおもえば、読んでみるとそんな浅い話ではなく、極めて大事な「心を休める方法」であることを教えてくれる。
「精神的な筋骨を鍛える(1月18日)」は、読んでみるとナルホドと納得させられる。

「人生は死ぬまで闘病(10月18日):人間は生まれたときから死ぬまで絶え間なく病と闘っている。健康とはその戦いに打ち勝っているときの状態である。自分がその生命に違和異常を感じるとそれを病と言っているが、それは生命が病的刺激と闘っていることを意識しただけのことである。意識しない前に既にこの戦いは開かれている。開かれていたのである。だから積極的な抵抗力を常に養成する必要があるのである。」は、「そうか私は連戦連勝してきた強い者なのだ!」と愉快な気持ちになった。そしてその出典である『錬身抄』へと進める。

また、大きな問題への入り口となる言葉は特に重要で、「信念は煥発するもの(5月10日):我々がこうやって活きているのは、多少なりとも信念があるからである。どうすれば信念が確立され、強くなるか。それはまず、「信念を煥発すること」である。信念は煥発しなければ、強くならないのである。信念は出たくてうずうずしているのに、消極的な観念がそれにフタをしていて、心の底の底の底に、いつのまにか下積みにされてしまったのである。信念が煥発されてくると、事あるときも常に事なきのようになれるのである。」は、その出典を知ることにより、理解がむずかしい「信念」という事柄を勉強するための手がかりを、『運命を拓く』の8章に得ることになる。

なによりも、私にとってこの本の最も有用性の高いところは、同じようなテーマを並べてみることができることである。「思いやりの実行(5月15日)」と「相手の気持ち(4月12日)」や、「幸福は苦悩から生まれる(2月2日)」と「不幸は幸福を招く(6月18日)」、などがあり、それぞれを比べながら読んで理解を深めることができる。

その中でも、「積極」ということの理解には参照するところが多い。「絶対的積極・・・対抗しようとか・・・もう一段高い・・・(7月5日)」「理想の積極心とは・・・超然として晏如たることを得る・・・(7月23日):積極精神とは、事あるも事なき時も、常にその心が、泰然不動(たいぜんふどう)の状態にあることをいうので、要約すれば、何事があろうと…たとえば、病難に襲(おそ)われようと、運命難に陥(おちい)ろうと、心がこれを相手にせず、言い換えるとそれに克(か)とうともせず、また負けようとも思わず、超然として晏如(あんじょ)たることを得る状態が、天風哲学の理想とする積極心=平安を確保し得た心的状態(絶対的な強さをもつ心)なのである。」「病は忘れることで治る・・・心がそれから離れさえすれば・・・(7月8日)」と同じようニュアンスで続くのだが、ふと、『真人生の探究』の338ページには「なにくそッ!!これしきの病に負けるものか!!」とあることを思い出して、雰囲気が違うなあと考え込む。そこでその『真人生の探究』を取り出して読み進むと、次のページに「・・・元気というものは、健康でなければ出ないと思うのは・・・錯誤・・・」とあり、そこから「積極」とか「絶対」に関する勉強を進めることができた。

この本はわたしにとっては心身統一法を勉強するときの「辞書」や「索引」のような役割がある。

中村天風財団(公益財団法人天風会)認定講師 伊藤 秀樹
(2020.7.22掲載)