入社して間もない頃に読んでそのままになっていた『天風先生座談』が13年後、人生を変えるきっかけとなりました。仕事がうまくいかなくなって私自身は気が付いていませんでしたが、毎日会社を辞めたい、とつぶやいていたそうです。天風先生の教えを知り、できることを少しづつ実践することによって、入会から20年、どんな時も自分を信じることができるようになってきました。
積極的な人ってどんな人だろう
私は損害保険の会社に勤めています。入社して13年目、自動車事故の保険金を支払う部署に異動になりました。社歴は長かったのでできるだろうと思って仕事を始めました。1年目は助けてくれる先輩もいてよかったのですが、2年目からは先輩も転勤し思うように仕事は進まず、次第に人間関係もうまく行かなくなり、行き詰るようになりました。
自分自身では気が付いていませんでしたが、お昼休みに毎日「会社を辞めたい、辞めたい」とつぶやいていたそうです。このままではいけない、どうしたらいいかと思い、その時再び手に取ったのが入社して間もない頃に読んだ、宇野千代さんの『天風先生座談』でした。
その本を読みながら会社に通い、文庫版の『運命を拓く』で天風会があることを知って、講習会を聞きに行きました。しかし、仕事が忙しくて終わりの15分くらいしか聞けず、お話の内容もほとんどわからないまま、天風会館の場所やどんな人が聞きにきているのかなと雰囲気をほんのちょっと・・・・入会案内を貰って帰りました。
入会するか1週間くらい考えて、合わなかったら1年でやめればいいやと思いつつ、自分の周りには積極的な人がいない、本当の意味で積極的な人とはどんな人だろう、見てみたいという好奇心が勝った結果、入会しました。
入会しても、仕事は相変わらずでしたが、次の天風会の行事まで頑張ろうと気持ちを引っ張りながら過ごしていました。それから半年の4月、後思いがけず異動することになりました。たまたま以前いた部署に欠員ができてそこに戻ることになり、3月31日と4月1日でガラリと環境が変わりました。
いけばなとの出合い
入会の翌年、天風会館である女性講師の講習会を聴きました。
その講師は華道家元池坊のお華の先生もされていたのでお話の中に沢山のお花や木が出てきました。詳しい内容は覚えていませんが、とても心に響く内容でした。一緒に講習会を聴きにいった方がその講師にお花を習っていて、その後思いがけずいけばなに縁ができ、華道家元池坊に入門しました。
天風哲学といけばなの哲学的な側面は共通しているところがありました。どちらも関連しながら私なりに教えていただくことを深めていくことができたように思います。
ある時先輩が出瓶する華道展で先生から「この花はあなたが入れなさい」と言われた時はそんなことしていいのかと思いましたが、天風会で習う態勢をとって花を挿しました。先生からは「ここの花はしっかり態勢ができていないと入れられないのよ」と後から教えていただきました。
また、六本木ヒルズで行われた大規模な華道展では、花も花器も全部自分決め、3日間とも内容を変えて花をいけるという機会を得ました。自分の表現したいことを形にするのにお稽古を重ねましたが、中々思うようにならず、華道展が迫って焦っていた時に講習会である講師のお話を聴き、潜在意識ではいろいろなことが繋がっている、「自分はできる」と信じようと気持ちを切り替えることができました。今までどこか自分以外の誰かや何かを頼りにしたいと思っていたところがありましたが、この華道展を通じて「頼みになる自分」がいるのだと感じました。
そして東北の震災があった年の10月、鎌倉での2日間行修会の翌日に以前から心臓の悪かった母が急逝しました。6月に心不全で入院し退院後は自宅療養でまずまず元気で過ごしていたので、まさかこんなに早く逝くとはと驚きましたが、母もまた娘に苦労をかけまいと旅立っていったのだと感じました。母と二人暮らしでしたので葬儀や様々なことを対処せねばなりませんでした。冷静に対応できたのも天風会で習っていた事が役に立ちました。
昨年9月から、ある劇団所属の俳優さん達にいけばなを教えることになりました。
対人態度や言葉の使い方、天風会で習ったことを活用しながら、多くの人にお花というものを身近なものとして教えていきたいと思っています。
そしてこれからも花と共に、天風教義と共に自分を信じる力を高めていきたいです。