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創立100周年記念企画のテーマの一つは「人生の繁栄と成功」です。このテーマに関連して、ミリオンセラー『ユダヤ人大富豪の教え』の著者である作家・本田健氏にお話をうかがいました。
本田氏は、誰かを幸せにすることで豊かになる「ハッピーマネー」という考え方を提唱されています。本田氏の一連の著作は、年代をこえた幅広い人々に支持され、累計七百万部以上が発行されています。
対談の中で「何かを本気で決めれば人生が必ず動き出す」と言われた本田氏の強固な信念には、まさに天風哲学と通じ合うものを感じ、大いに共感・納得させられるものでした。

 

◆ゲスト 本田健氏(作家)

◆インタビュアー 広田真一氏(中村天風財団理事)

 

広田 本田様はお若いころから中村天風の影響を受けたとおっしゃっていますが、中村天風のことをどうやって知られたのでしょうか。

本田 実は、父が昭和四十年代からずっと天風会員だったので、天風先生のカセットテープ等がありました。

広田 そうだったんですか。お父さまが天風会員だったとは知りませんでした。

本田 それが元々ですが、人生に関する本を読むようになってから、天風先生のお話をいろいろなところで学び、私が人生で影響を受けた方の一人です。

広田 では、本田さんから見た中村天風の印象を教えていただけますか。

本田 小さいころ父のテープで聞いた中村天風という人物と、大学生のときの中村天風像と、三十代に自分がいろいろ語り出した時の中村天風先生と、ちょうど五十代に入った今の天風先生では、印象が全然違うのです。小学生とか中学生の時には、中村天風さんと言うと、ちょっとしゃがれた声で人生を語る人という、やさしいけど怖いような印象がありました。
二十歳ぐらいから本で読んだ中村天風先生は、人生の真理を語る人という存在でした。ちょうど自分が「積極的に生きるとはどういうことなのか」ということを考えていたときだったので、心に深く響き始めたのです。三十代に入って、自分の人生で何をすれば一番自分も幸せで、そしてまわりの人にも役立つだろうかと考えていたときに、天風先生が辻説法から始めたというのを読みました。
そして、平成にもし先生が生きていらっしゃったら、何から活動をスタートするだろうと思って、小冊子を書き始めました。もし私がやることが少しでも価値があるのであれば、きっと出版社が見つけ出してくれたり、誰かに見いだされるのではないかと思い、「幸せとは何なのか」ということを発表し始めたのが三十三歳の時でした。

広田 そうでしたか。中村天風の時代には辻説法でしたが、今の時代に本田さんは本を通じてご自分のお考えを伝えようとされたわけですね。

本田 そうです。それから、また二十年近く経って、中村天風というのが、昔よりすごく近いけれどまた遠い存在になっています。すごく悩まれ、いろんな葛藤もたぶんおありだったと思うんですよ。そういう「人間中村天風」も感じますし、同時に、「どれだけすごいんだろう」というような高さも感じます。なので、一年に一回は必ず中村天風さんの本を読み返しています。

(本田氏)

【 世界に伝えたい日本の心】

 

本田 私は天風先生の哲学は、今でもその本質は少しも古くなっていないと思います。多少表現を変える必要があるかもしれませんが、それさえすれば、現代でも通じますし、百年後でも通じると思っています。

広田 世界にはどうでしょう。

本田 もちろん通用すると思います。ただ、日本的な言い回しなどを多少アメリカ人とかヨーロッパ人がわかるような切り口にする必要はあると思いますが、たぶん禅の鈴木大拙とか、それぐらいに受け入れられる可能性は十分にあると思います。ああいうすごい骨太の哲学というのが日本にもあるんだということを、ちゃんと世界に出したいですよね。

広田 よく西洋の哲学と東洋の哲学とは考え方が違うと言いますが、それでもやはり真理としては一致していると考えられるわけですね。

本田 そう思います、特に中国、アメリカ、ヨーロッパでは受けるのではないかと思います。あと、インドですよね。もともと先生の哲学はインドからの流れがあるわけですから。
ただ、単に日本語を英語に変えるだけではだめで、世界の人たちの感覚で理解できるようなかたちにリライトする必要はあると思います。そういう作業は文化的に必要だとは思います。五%ぐらいの切り口を変えるだけで、「あっ、こういうことだったんだ」というふうに、天風先生の哲学が伝わりやすくなるのではないかと思います。

広田 今度、本田さんご自身の英語のご著書も、世界各国で出版されるそうですね。

本田 はい。『ハッピーマネー』という本です。英語の副題は、”The Japanese Art of Making Peace with Your Money”です。お金とどうやって心平安に付き合うかということがテーマなのですが、日本のお金に関する感覚を世界に伝えたいと思っています。日本には、気持ちよくお金をもらって、気持ちよく先に渡す、という豊かさと幸せの流れを自分たちで作り出すということがありますが、その美しさは世界にあまり伝わっていません。
日本人は一生懸命仕事して、クルマとか、アニメとか、寿司とか作っているけど、「でもいったい日本人て誰?」というのが、世界からは見えていません。日本人は、心から気持ちよく平和を祈ったり、人と分かち合いをしたりとか、そういう民族なのです。そういうことを発信したのは、新渡戸稲造の『武士道』が一番最後です。一九〇〇年ごろの本ですから、もう百年以上、日本から「日本すごいぞ!」という本が出ていません。そんなおかしなことがあるでしょうか。アメリカの本で日本に来たものが何冊あるか考えると、分かりやすいと思います。

広田 成功哲学もほとんどアメリカから入ってきていますよね。アメリカのお金に対する考え方とか、成功に対する考え方は、日本とちょっと違うような気がするのですが。


(広田氏)

本田 そうなんです。私は二十一世紀の後半にジャパン・フィロソフィーのような、社会に役に立つ、世のため、人のために役に立つ人が、幸せに成功するのだというコンセプトを伝えたいと考えています。
人を喜ばせてお金をもらう。お金持ちにならなかったとしても、たとえ月に三十万、二十万であっても、自分が誰かを喜ばせてお金を得る。お金を使うときもそういう感性で使うというような、豊かさと感性のサイクルをつくることができたら、もう十分その人は幸せだし、その人の人生は成功なんじゃないかというのが、これから世界に伝えたいことです。誰かに貢献したり、誰かを幸せにすることで豊かになるという生き方もあるというのが、この「ハッピーマネー」という考え方なのです。

広田 天風先生もまさに同じようなことをおっしゃっています。世の中のため、人の役に立つことをしていれば、豊かさもそれなりについてくる。お金が先ではないということですね。

本田 はい。ですから、中村天風さんのことを勉強されている方が私の本を読まれたら、「ああ、これって天風先生の影響を受けているな」というところを何カ所も見つけられると思います。やはり人の役に立つということは、百年前も、今も、百年後も、幸せにつながることだと思います。今その基本を、どこかで忘れてしまっているように感じます。

 

【中村天風に学んだこと】

 

本田 私が天風先生から学んだ一番大きなことの一つは、〝積極的にちゃんと決める〟ということの深さではないかと思います。

広田 それは、どういうことでしょうか。

本田 勝手なとらえ方かもしれませんが、天風先生のすごいところは、「物事を本当に深く決めると物事が動き出す」ということをおっしゃっているところだと思うんですね。例えば人に真理を伝えるとか、人に喜びを伝えるとか、生き方を伝えるというときに、百人に伝えるのか、千人なのか、それが百万人なのか、一千万人なのか、一億人なのか。イエス・キリストは二十億人の人がクリスチャンなわけですから二十億人に伝え、かつ自分が死んでから二千年も伝えていることになるわけです。中村天風先生の言葉も、五十年前に亡くなられてもなお今でもその真理がちゃんと力をもっていらっしゃる。その力というのはどこから生まれたのかというと、それは先生が本気でこれを世の中に出していきたいと決められたときで、そのエネルギーが今も永続していると思います。本気で決める、自分が「これをやる」というふうに決めたときの決意の深さと大きさとエネルギーの強さが、その人がやっているすべてを決めるのではないかと思います。それが天風先生のすごいところだなと感じますね。

広田 もちろん誰でも本気で決めたいと思うわけですけど、そこまで深く決めるというのは簡単ではないかもしれません。その点をどうお考えですか。

本田 自分の中にある一番深いエネルギーとつながることが、決定的に重要だと個人的に思っています。

広田 ああ、なるほど。

本田 自分の中にある最大のエネルギーを解放するわけです。その解放がワイヤレスみたいなもので、三メートルしか飛ばない人と、三十メートル飛ぶ人と、三百メートル飛ぶ人がいると思います。人間はある意味、脳波がお互いに同調しあっていると思うので、この人とすごく気が合う、合わないなどありますし、あの人が言っていることはすごくよくわかるというのがある。天風先生は亡くなられてからでも、先生の心と波長がまだ人々とつながっているという意味では、その波長の周波数がどれだけ高く、そして広く文化を超えて伝わり続けていると捉えることができます。一人の人間が決めるとどれだけのことができるのかということを、先生は証明されたのではないかと思います。

広田 なるほど。たいへん興味深い考察ですね。

本田 どこまで深く決めるかということですよね。それは、事業をなす、会社のプロジェクトを発展させる、幸せな家庭をつくる、アカデミックな世界で活躍する、何でも同じだと思います。例えば、アカデミックな世界なら、一人の学生を変えるだけじゃなくて、何十人、何百人という学生に影響を与えると決める。天風先生はそういう気を創り出す達人だったのではないかと感じます。ご自身がその気の中心になるというか、本当に元気を発散するパワーがおありだったからこそ、すごいリーダーたちが集まって、そしてその人たちがまたそういうリーダーになっていったという、善のパワーの循環みたいなことが起きたんじゃないかなと想像しています。

広田 それは本田さんならではの中村天風像ですね。

本田 なので、直接お会いできなかったのは残念ですが、自分の中では天風先生はほとんどそこに生きていらっしゃるかのように感じています。よく私の夢の中に出てこられます(笑)。夢の中で松下幸之助さんとか中村天風先生とか五人ぐらいの方々に、「君は世界に君の考えを伝えようと思っているけど、まだ全然心が定まっていない」と言われて、「どこが定まっていないんでしょうか」と聞いたら、「本気で一億人の人に届けようと思っていないだろう。届いたらいいな、ぐらいにしか思っていないのではないか」と厳しく言われました(笑)。

 

【 直感の力について】

 

広田 本田さんはご著書の中で、直感ということをよく言われておられますね。

本田 そうですね。物事を決めるときに、損得で決める人とか、好き嫌いで決める人とか、いろんな人がいると思いますが、得だと思ったら意外とそれが損になったりとか、好きだと思ってもあとで嫌いになったりとか、そういうことってありますよね。実は幸せのためには、直感で決めるのが一番いいんじゃないかというのが今の私の結論です。
直感というのは、自分の心の奥深くにあって、本人よりもよく知っていると思います。そのサインは心と身体に出てくるものです。何か新しいことをやろうとするときに心がワクワクする。そうすると心も身体も元気になる。あるいはあることをやろうと思っても、なぜか気持ちが乗らないなというときには、やっぱりどこかでそれをやることが自分の幸せにつながらないということを心と身体が知っているように思います。それは例えば投資の話もそうかもしれませんし、男女関係でもそういう直感を自分も体験しています。ひどい目に遭う前に直感的に「なんか変だ」とは感じていたものの、それを無視して失敗したということはよく聞きます。よりよく生きようと思えば、自分の直感に従うことです。ただ、「直感に従うこと」と「感情に従うこと」とは違います。

広田 そこの見分けはどういうふうにつけるのですか。

本田 一時的な感情と、自分の中の直感とは違うものです。特に「恐れ・不安」と「直感」を見分けるのは重要です。例えば私は八ヶ岳に研修センターを購入したのですが、修理代だけで何千万円もかかると言われて、急に怖くなりました。「えっ、そんなにかかるのか」と。でも怖くなったというのは、お金を失う不安で怖くなったのです。センターを買うかどうかというのとは直接関係ありません。研修センターを買うということに関して、直感の答えはイエスだったのです。ただ、それに対するお金の不安が出ただけです。
誰かと付き合って結婚するときも、この人と結婚するということ自体にはイエスかもしれないけれど、新しい生活に関しては不安が出てくるかもしれません。でも、不安が出てきたからと言って、答えがノーというわけではありません。
感情的に過度にワクワクしたり、過度に不安が出たからといって、それをやるかやらないか、という結論とは違うと思います。自分の中に起きる感情と直感との見分け方が上手くできないと、結局、感情に振り回されることになります。なので、感情は川の流れのように見つめて、本当に自分が求めるものに向かっていくという、この二つの感覚ってすごく大事だと思っています。

広田 中村天風は、自分で自分の心を見つめることを「内省検討」と言って、その実行を勧めています。

本田 そうですね。自分の心の揺れがどうなっているのかを冷静に見る感性というのはすごく大切です。一時的な感情というのは、そのときの気分で盛り上がったり、下がったりするものです。例えば、お金が入ったからといってそんなに喜ぶことでもないかもしれない。誰かにフラれたときに、そんなに過剰に悲しむことでもないかもしれない。なぜかと言うと、本来会うべき人には、本来会うべきじゃない人と一緒にいては絶対に会えないわけです。なので、自分とあわない人と一緒にいないということは大事なことです。それは仕事でも同様です。リストラされてすぐ落ち込む人がいますが、私は「おめでとう!」と言うことがあります。そこは本来いる場所ではない、本来いる場所に行ける自由を得たんだよ、という話をします。大体半年か一年以内には、前にお会いしたときよりも、人生が良くなっています。いろんな人たちの人生の追跡調査をしていますと、一時的に悪くなったとしても、必ず本来その人が戻るようなところに行くというのが、私の今の感覚です。

 

【感情と思考と行動】

 

本田 結局、人生は感情と思考と行動の三つでできていると思います。自分の今の状態に対してどう感じるのか。世界一不運だったとしても、お金もないという大変な状態だったとしても、心ひとつのおきどころで幸せにもなれるわけです。次に、思考というのは、例えばノーマネーの状態だったとしても、すぐに入ってくると思っているノーマネーの状態なのか、ああ、もう一生自分はお金に縁がないから死ぬしかないと思っているノーマネーの状態なのかでは違うでしょう。現在の状態を冷静に、正確に分析する思考力というのも大事です。そこから、自分は積極的にこれをやるのか、やらないのか、という行動につながる。自分の中で、この感情と思考と行動の三つに上手く向き合って、三つの整合性がとれると、その人が本来行く幸せな場所に戻れると思います。

広田 感情と思考と行動の一致ですか。

本田 自分が感じること、考えること、行動することがピシッと同じライン上に一致していることが重要です。

広田 それが一致しているかどうかということを見る、ほんとの自分みたいなものがやっぱり必要なのでしょうか。

本田 そうですね。それに加えて、一人じゃなかなかわからないときには、いろんな友人とか知人とか先生とか、そういう人たちが必要でしょうし、互いに学び合っていく仲間は貴重な存在です。そういった仲間同士で話をしながら一緒に学び合うということを、今世界的に展開しているところです。私は、この感情と思考と行動の一致が全ての結果を生むと思っています。

 

【 言葉の力について】

 

広田 中村天風は言葉の力について説いていますが、本田さんのご著書にも言葉のことがよく出てますね。

本田 言葉は、いろんな力を持っています。人を傷つける言葉もありますし、人を勇気づける言葉もあるし、人に愛を与える、元気を与える言葉もありますよね。私は作家として、その言葉の持つ力というのをすごく大切にしています。たった一つの言葉が、人の人生にずっと影響を与えるということがあると思うんです。言葉をどういうふうに使えるか、それがうまく使える人はリーダーになっていくわけですし、それを上手に使えないと、誰かに嫌われたり、夫婦関係がうまく行かなくなったりするものです。ちょっとしたねぎらいのひとことがあるかどうかが、すごく大きいですよね。
上司との関係でも、ここぞというときにひとこと言ってほしいのにその言葉がないとか、反対に「なんでそんなこと言うんだ」というようなことをタイミング悪く言うとか。言葉を磨くということはとっても大切なことです。作家としては、誰かの心に残るような言葉をどれだけ紡げるかということを常に考えています。

 

【ネガティブなことの意味付け】

 

広田 本田さんは、ご著書の中で、自信のなさや弱気な性質も才能であって、それをどう活かすかだというようなことをおっしゃっていますね。

本田 私はけっこうネガティブなサイドからの物事を扱うんです。なぜかと言うと、もちろん天風先生の積極的な生き方とか教えに関しては同意していますが、そうは言ってもどうしても人はネガティブな状態に陥るものです。落ち込んでしまいがちな人に、ネガティブをどう処理するかということを、講演やセミナー、本を通してお伝えしています。

広田 ネガティブに考える人は感受性が鋭いので、弱い立場の人にアドバイスすることができるからカウンセラーなどに向いている、これも才能だというようなことをおっしゃっていらして、新鮮に感じました。

本田 そうですね。例えば、すごく大変な状況にあって自分はだめだとか、離婚したから自分には何も価値がないと思っている人は、大変な状況を経験したからこそ、人の痛みに寄り添うこともできるわけです。病気になって身体の自由が利かないというのは、有能な人ほど「なんでこうなってしまったのか」と苦しみ悩みますが、そういう不可抗力的な、ネガティブなことは、人生で何回も起きるものです。なぜそれが起きるのかということと、それをどうやって自分の人生に活かしていくかということが理解できれば、そこであまりネガティブになる必要はなくなります。大切なのはネガティブということの意味づけです。ネガティブなことも含めて、もっと大きな視点から積極的にとらえるということです。それは天風先生もおっしゃっていることだと思います。天風先生の本を一部だけパラッと見た人は「ネガティブを切り捨てろということか」と思う人もいるかもしれませんが、積極的に生きるということは、ネガティブを無視していいということではないと思います。

広田 まさにその通りだと思います。

 

【 自分の取扱いマニュアル】

 

広田 本田さんは、幸せになるには三つの鍵がいる、それは自分が誰かを知ること、自分が好きなことを追いかけること、自分とまわりの人を愛して愛されること、と書かれていらっしゃいます。「自分が誰かを知ること」とは具体的にどういうことでしょうか?

本田 これはいろんな階層で話ができます。簡単なレベルで話をしますと、自分がどういうときに幸せを感じるのか、ワクワクするのか、どういうときに落ち込むのかということを知っていると、自分の取扱いマニュアルができます。私の場合、講演をしたり、人と会ったりするときにエネルギーが上がります。でも人によっては一人でシーンと文章を書いているときにアップする人もいるでしょうし、料理を作っているときにエネルギーが上がる人もいるでしょうし、何か物事を考えるときにエネルギーアップする人もいると思います。そういう、自分がどういうときに幸せになるのか、ならないのかというようなことを知るというのが、まず大事なことです。

広田 自分の取扱いマニュアルというのは、わかりやすくていい言葉ですね。

本田 けっこう自分のことは自分で分からないものです。自分の取り扱いが分かれば、ちょっと気分が落ち込んでもすぐに自分を取り戻すことができます。

広田 なるほど。

本田 もう少し深い話をしますと、自分が一体何のために生まれてきたのか。この人生の目的は何かということを、本当の意味で知ることができたら、どれだけ経済的にあるいは肉体的に大変だったとしても、心は天国にいられると思います。自分は誰かにこういうかたちで貢献できるとすごくうれしいということがわかると、その活動を増やせば、その分だけ幸せが増えます。私は講演活動やセミナーで、来られた方が自分の生き方を見い出されたり、道に迷っている方が「自分の道はこうだ」というのを掴んで帰られたりするのを見ると、それは本当に深い喜びです。
そして、私はいつも、自分がやることで誰かの役に立つことってないだろうかということを考えて生活しています。それが今は本を書くことで、それも日本語だけで書いたら一億三千万人ぐらいしか読めませんが、英語で書くことによって世界二十億人の人たちが理解することができます。英語で書くとそれが次には他の言語に翻訳されていくので、ポテンシャルで言うと三十億人ぐらいの人たちが本を読めることになります。自分自身がどうやって人の役に立てるかを知ることは大事なことだと思います。

広田 具体的で、非常によくわかるお話ですね。まさに「人生の繁栄と成功への道」が見えた気がしました。

本田 今日は、父の時代からご縁のある天風会の方々にお越しいただき感激です。ありがとうございました。

広田 こちらこそ、ご多用の中、長時間に渡り興味深い
お話をありがとうございました。

 

● ● プロフィール ● ●
本田 健
神戸生まれ。
経営コンサルタント、投資家を経て、29歳で育児セミリタイア生活に入る。四年の育児生活中に作家になるビジョンを得て、執筆活動をスタートする。
「お金と幸せ」「ライフワーク」「ワクワクする生き方」をテーマにした講演会、セミナーを全国で開催。
著書は、『ユダヤ人大富豪の教え』『20代にしておきたい 17のこと』(以上、大和書房)など多数。氏の一連の著書は累計700万部以上が発行されている。2018年4月に発売された『大富豪からの手紙』(ダイヤモンド社)も現在8万部を突破。
無料インターネットラジオ「本田健の人生相談~Dear Ken~」は3800万ダウンロードを記録。
2014年から世界を舞台に講演、英語での本の執筆をスタートさせアメリカの出版社と契約。初の英語での書下ろしになる著作(The Happy Money: The Japanese Art of Making Peace with Your Money)が、2019年6月にヨーロッパ、アジア、中南米など、世界25ヵ国以上で発売されることが決まっている。

(『志るべ』2019年4月号より)

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