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令和元年6月30日に、東京より大島誠氏、平野秀典氏、2名の講師をお招きし、「中村天風財団京都の会創立90周年記念行事」として講演会が開催されました。

事前申し込みは149名の満席でしたが、あいにくの大雨や、大阪G20開催などの影響で交通機関のまひによりキャンセルされた方もあり、各地域からの会員(名古屋、大阪、神戸、岡山等から)と一般の方を含め総勢129名の参加となりました。

 

第一部講演では、大島誠氏より「信頼の創造~心の絆を生み出す喜び~」という演題で、ご自身が海外赴任をされた際、天風哲学をどう活かされたかというご体験をお話頂きました。社長として赴任したインドネシアでは、現地社員とのコミュニケーションを図るために、社員一人一人と、個人面談を行い、面談の半分の時間はご自身の人生を語られたそうです。先ず、自分から相手に心を開くという自己開示から社員との関係性を構築されました。又、信頼される土台として言行一致を心掛け、信念と行動の反復から信頼の絆を生みだされました。“信頼の絆があるところにストレスはない”との言葉が印象的でした。


(大島氏)

相手の無限の可能性を信じる事で信頼が生まれる。信頼による強い絆があるからこそ、各人のエネルギーを進化向上に使うことで、皆が成長できるとの事。まさしく、天風哲学を現場で実践され、人間関係を築きあげられたのだと思いました。最高の人の活かし方についてお話し頂けたと思います。

最高のリーダーの定義は「部下から感謝され、親しまれ、尚且つ畏(おそ)れられる事」という言葉で締めくくられました。

第二部の講演では、平野秀典氏より「感動の創造~人の喜びをわが喜びとする~」という演題で、ドラマ思考という観点から、斬新な切り口で、演劇と天風哲学を融合した内容のお話を頂きました。

指導先の会社のピンチを立て直す際に、ドラマ思考という役者の演出の手法を用い、お客様に満足して頂くだけでなく、感動させる事。社員をヤル気ではなく、その気にさせ、表現力を磨く事で業績を上げる事に成功されたという体験談をお話しされました。

一流の演出家とは、その人と一緒にドラマを作りたいと思わせるような人であり、人をその気にさせ、上向きのビジョンへと進化させるようにマネジメントする事が出来る人の事。又、ドラマ思考では、ヒーローも悪役もどちらも必要で、誰もが、自分の人生では、ヒーローです。そして、天風先生のおっしゃっている潜勢力を発揮することにより、ヒーローのテーマである、ハッピーエンドを生み出す事を常に意識してピンチを乗り切っていくものであるとのことでした。

舞台俳優は、世阿弥が提唱した、「離見の見」で、演じている自分を、舞台の上、つまり離れたところから見ているように、芝居を行うそうです。そうすることにより、舞台全体を客観的に見ることができる。それは、天風哲学でいう内省検討と似ているとの事でした。主観で芝居をやりながらも、客観的に自分自身をみる事でパフォーマンスが発揮できるのだと思いました。


(平野氏)

上向き思考についてのお話の部分では、参加者に上を向いて、悲しさ・つらさの感情を笑顔で表現する時と、下を向いて、うれしさ・楽しさを表現する時の顔の向きと言葉の出し方の違いで気持ちが変わるという体験をさせ、前向きよりもらせん階段のように進化向上する上向き思考の大切さをお話し頂きました。

プラスの言葉をかけると相手が喜ぶ、自分だけ、相手だけではなく、双方向の喜びを求めることで、信頼の絆が結ばれる。他の人との感動の共有が最高の喜びとなります。「人生はドラマ。それを見事に演じきっていくことが命の尊さである」と締めくくられました。

終わりには、平野氏オリジナル音楽のBGMで中村天風氏の言葉を朗読するという試みをされました。朗読も素晴らしく、天風先生のお言葉が心に深く刻み込まれました。

講演会は盛況の内に終了し、大島氏が参加者からの質疑応答をされている間、平野氏には著書『感動の創造』を当日持参された方々への直筆サインのご要望にお応え頂きました。終了後の懇親会も、お二人を囲んだ数十名の参加者で盛り上がり、大変実りの多い時間となりました。

 

●平野秀典氏と当財団理事広田真一氏の対談記事はこちらから

 

●平野秀典氏の著書『感動の創造~新訳 中村天風の言葉~』はこちらから

 

中村天風財団(公益財団法人天風会)認定 京都の会 90周年記念講演会実行委員