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『令和』という新しい時代を迎えて一ヶ月余り経った2019年6月8日に、中村天風が上野精養軒前で辻説法を始めてから100年という大きな節目を迎えることができました。

この節目に中村天風財団では、東京の護国寺にある天風会館を含む日本全国17ヶ所、ハワイ2ヶ所の計19ヶ所に集って同じ時刻に一斉に行修会を行いました。ZOOMというWeb会議システムを活用して、19地点全てが何百、何千キロという物理的距離を超えて、まるで一つの場所に集ったかのように各地をつないで、中村天風が考案した運動法や安定打坐という天風式坐禅法、ひとりマッサージ等を行います。

(当日の中継プログラム)

本行事の検討段階で、インターネット回線を用いる限り、どのシステムを用いても滞りなく中継を繋いでいくのは無理だという声もありました。たとえ完璧な中継は困難で、ところどころで中継が途切れても、一体感のある雰囲気が少しでも醸し出せればいいのではないかということで検討を重ねました。

最初に取り組んだのは、ZOOMの使い方を各地の会員に慣れていただくことです。中村天風の門下であり山本五十六の「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」を実践して、まず技術担当チームが使っているところを各地に赴いて見て頂きました。狙い通りに各地の会員が自発的に読書会や打合せ等でWeb会議をご利用頂いたようで、鎌倉での講習会をハワイの会員に配信することにも成功しました。
全体の予行練習も3回行いました。最初の予行練習では中継がまったく上手くいかず、本当にこれで本番大丈夫かという声も漏れました。でも、そこは天風哲学に則って取り越し苦労厳禁で、取り敢えず今できることをやるしかないと改善を続け、予行練習を重ねることで中継はスムーズになりました。会員の中で普段テレビ会議を仕事で利用している方からアドバイスが寄せられ、トラブル時対応など非常に参考としました。

(ZOOMを使った中継)

当日、天風会館には予想を上回る182名、全中継地点には計560名の参加者が集まりました。天風会館では一階の会場だけで収まらず、四階にプロジェクターを用意して分散して頂かなくてはいけないほどでした。

全国一斉行修会の開始時間となり、司会の一声で会が始まりました。天風会館で実行委員長である大久保信彦理事長の挨拶があり、その後で中村天風の直弟子である服部嘉夫顧問に「甦えりの誦句」を唱えて頂きました。


(大久保信彦理事長の開会挨拶)

ここから群馬、名古屋、福岡、鎌倉へと中継が続きます。心地良い緊張感の下で中継は滞りなく進み、中継先と天風会館の誦句の唱和は驚くほど息がピタリと一致しました。さらに神戸、大阪、仙台で呼吸操練、統一式運動法、積極体操と運動法が続きます。技術的にどうしても多少のタイムラグはありますが、以心伝心で補って違和感なくプロジェクターの映し出す先の何百キロ離れているモデルさんの動きを東京の会場にいる会員が追っていきます。静岡の光線呼吸も天風会館と息がピッタリです。

(天風会館1階の様子)

オアフ島で日本語、ハワイ島で英語の中村天風財団の宣言が唱和されます。オアフ島の透き通った青空が印象的で、数千キロ離れているのが嘘のように声もクリアに会館に響き渡ります。前半の最後は長野の会員に「力・勇気・信念」で締めて頂きました。

休憩を挟んで後半は北海道の養動法の解説から始まりました。解説が終わると、広島、岡山、愛媛と中継が繋がり、天風会館での安定打坐へと続きます。

安定打坐はシステムがブザーや鐘の音を雑音として遮断してしまうために、各地でブザーと鐘を鳴らします。これは接続実験や予行練習で抽出された技術的課題の一つで、安定打坐の実施方法を工夫することで解決しました。続いて、中村天風の講演音源は東京からの配信です。

その後のひとりマッサージは北陸の担当です。金沢にいるモデルさんの動きに沿って各地の会員が体を動かしています。中継の最後の宮崎と越後の「力の誦句」です。遠く離れた力強い声が全国各地を震わせました。

気付くと全国一斉行修会も最後です。村里泰由副実行委員長による中村天風への感謝の言葉があり、締めは東京の会会員の「力・勇気・信念」です。天風会館も、各地の会場も感動に包まれたことと思います。

(村里泰由副実行委員長)

大きなミス無く会が終わったことに何よりの驚きでした。会員皆で心を一つにすると奇跡が起きるんだという信念を得ることが出来ました。天風会の100年の歴史を十二分に活かし、次の100年を迎える相応しい最高のひと時となりました。

この場を借りて、全国一斉行修会の準備にご尽力頂いた天風会館のスタッフ、各地でご準備頂いた皆様、さらに各地の会場にご来場頂いた皆様に心より感謝を述べさせて頂きます。

創立100周年記念事業 実行委員
(2019.12.5掲載)